しかくかんけい!


「どうして、」

「本当は何かやりたいことがあるみたいに、聞こえたわ」


問うた声に被せるように続けた愛莉は、顔だけこちらに向ける。



俺は幼い頃を思い出した。


「昔はよく、絵を描いた」


この河川敷で。

綺麗だと思ったものを、ありのままに。


「覚えてるよ」


愛莉は少し微笑む。

その澄んだ瞳は今、俺が何を言っても全て受け止めてくれる予感がした。



「画家になりたい」


ずっと誰にも言えなかった、夢。


愛莉の目が、少し見開かれたような気がした。


どう思っただろうか。

こんな幼稚な、浅はかな、考えを。


成功する可能性なんて米粒よりも極小なのに。


ほんの一握りの、僅かな選ばれし人間が、仕事にして食っていける世界。

甘くない世界だってことは重々承知している。


だからそんな夢は、もうとっくに捨てたはずだった。



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