しかくかんけい!
捨てて、目を背けて、ただ大人たちの言うとおりに授業も課題も模試もひたすら真面目に取り組んで。
将来は普通のサラリーマンになるんだ、と。
敷かれたレールから落ちないようにしっかり歩くんだ、と。
でも、どうしても、好きなんだ。
綺麗なものを、ありのままに、
描きたいんだ。
衝動にも似たこの気持ちは、
まるで恋のようだ。
「……」
「……」
隣の反応がなくて、だんだん恥ずかしくなってくる。
そもそも画家って言ってもいろいろあるし、今の発言はかなりアバウトすぎたかもしれない。
長い沈黙が耐えきれず、とうとう口を開く。
「……あー、自分で言ってて結構恥ずかしい。今どき画家になりたいって言う人いないよな、そんな不安定で一か八かの世界なんて。うん、ごめん、今の忘れて、」
「なれるよ」
「え、」
なれる、ともう一度、二の句を継がさぬように言う彼女。
思わず愛莉の方を見る。
こちらを向いていた。