しかくかんけい!


日はすっかり落ちて、あたりは暗くなっていた。

川の流れる音と夏の虫の声が、美しいコーラスを奏でている。


「その夢、もう誰かに話したの?」

「いや。愛莉が初めて」

「えっ、ご両親にも?」

「うん」


そっか、と言う愛莉の声が夜の闇に沈む。


「……そらのご両親、反対するのかな」


心配そうにつぶやいた。


愛莉は俺の祖父のことを知っている。

何かのきっかけで、幼い頃に話した覚えがある。


「するだろうね。いつも勉強しろとしか言わないし」

「きっと、ご両親にとってもそらは大事な存在なんだね」

「……なんで?」

「たぶんそらには、大変な思いさせたくないんじゃないかな」


そうかもしれない。

今どき画家一本でやっていくには無理があると思うし、そう簡単にうまくいくわけないのはわかっている。


大変なのは、わかっている。

だからこれまで、正しいと言われてきた道を、ひたすらに歩んでいた。



「でも」


声と同時に愛莉は起き上がった。


華奢な背中が、視界に入る。



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