しかくかんけい!


紙のこすれる音がして、
愛莉の手に力が込められたのを感じた。


捨てたはずの夢は

彼女の手の中で

眠っていただけだった。



「愛莉のそういうとこ、好きだよ」


自分を持っているところ。

周りに左右されないところ。

ぶれない考え方をするところ。

そういう、強いところ。


しん、と静寂が広がる。

風さえも音を立てていない。


……どうしたんだ?


突然黙り込んだ愛莉の様子を伺うと、俯いていて表情がよく見えない。



「……そういうの、やめて」


急に立ち上がった。


「……?」


冷たく放たれたその言葉の意味が、
瞬時に理解できない。


「か、勘違いしそうになるじゃん」


そう吐き捨てて、じゃあまたねっ、と逃げるように走り去って行った。


サラサラの髪の毛の間から一瞬だけ見えた、ほんのり紅く染まった頬。





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