しかくかんけい!


うつむいて、どんな表情なのかよく見えない。


「大丈夫?車酔い?」


心配になって顔を覗き込もうと近づくと、

突然ガタン、とバスが揺れて。


「!」

「っ!?」


コツン、とおでこがぶつかって。


「あ、ごめん」

「……ないで……」

「え?」

「あんまり勘違いさせないでよっ」

「え……」


ふい、と顔を背けた彼女は手の甲を口元に当てて窓枠に肘をつく。


その寸秒間。

ほんの一瞬。


サラサラの髪の毛の間から一瞬だけ見えた、ほんのり紅く染まった頬。


意味がわからなくて、

ただただじっと、

その艷やかな後ろ髪を、

見つめることしかできなかった──……






……─────サラサラ、と、せせらぎが耳に触る。


「同じだ……」


あのときの愛莉と、さっきの愛莉。


どうしたのだろうか。

俺はまた、あのときと同じ何かをしてしまったのだろうか。



いくら考えても、

いくら記憶を辿っても、

いくら空とにらめっこしても、

その解は、出せなかった。







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