しかくかんけい!


愛莉は肩に置かれた私の手を持ち上げてそっと剥がす。


「……だったら、それでいい」

「へ?」


どういうこと?

それでいいって、どういう意味?


私がしょーくんを好きなことと、

なんの関係があるの?


「それ以上聞かないで。今そらのこと考えると、つらいの」


長いまつげが少し揺れる。

いつもの柔らかい表情に戻っていた。


「……ぜ、全然意味わかんないよ」

「いいの。ハナは知らないほうがいい」


ごめんね、と言って踵を返し歩き出す愛莉。

私は強すぎる重力に逆らえず、地面から足の裏が離れない。


「ほらハナ、早く行こう」


まるで何事もなかったかのようにこちらへ声をかける愛莉。



サアッ……と風が吹く。

少し、冷たい秋風。


その風が、私の背中を押す。


愛莉はきっと今、闘っているんだ。

あのときの、私みたいに。


「あのね、愛莉!」


私はできるだけ明るい声で言った。


「なに?」


愛莉もいつもの優しい声で返事をする。


< 209 / 433 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop