しかくかんけい!



「私こういうの、あんまり気が乗らないんだよね」

「そっかー。私たち観客側は目の癒やしになってすごく楽しいけど、出場者は緊張しちゃうもんね」

「うーん、なんか違うけどまあそんなとこ」


そう言う愛莉の顔はぼんやりしていて、何か気がかりでもあるみたいな様子。


「あんまり無理しないでね? もし出たくなかったら辞退もできるみたいだし……」


すっごくもったいないけど、どうしても嫌なら仕方ないよね。


「別に辞退するほどじゃないけど。実行委員にも申し訳ないし、せっかくあんなに盛り上がってるんだし」


掲示板に集まっている生徒たちに柔らかい視線を送りながら言う愛莉。

その横顔がなんだか、すごく大人びて見える。


優しいなあ、と思わずこぼれた心のセリフが大人な愛莉の耳に届いて、なにが、とその首を傾げる。

私は、うふふ、と微笑みかけるだけにとどめ化学室へと足を進めると、それに続いて愛莉も歩き始めた。



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