しかくかんけい!



……────桜色の季節。


今年も満開になった桜並木を眺めたくて、小さな私は家の近くの河川敷で一人、散歩していた。


だいぶ時間が経って日が暮れそうになってきたので、そろそろおうちに帰ろう、と踵を返したとき。


ふと、目をやった先。


それは、一番大きな桜の木の下。


一人の男の子が、座っていた。



なぜだかわからないけど気になって、恐る恐る近寄ってみる。


男の子は、一生懸命スケッチブックに色鉛筆を滑らしていた。

しばらくその様子を見つめていたが、男の子が赤色鉛筆を置いたのを見て、私は声を掛けた。



「ねえ」


その男の子はくるくるで真っ黒な髪をさらりと揺らし、顔を上げる。



「なに」


サーっと春の風が吹いて、

頭上の花びらを散らした。



「何描いてるの?」


男の子の持っているスケッチブックを指差した。



「空だよ」



「……空?」



私は思わず、聞き返した。


こんなに綺麗な桜並木があるのに、空?





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