しかくかんけい!


「それ、私じゃないから」

「……は?」


にやりとゆるやかな弧を描いた唇が、
やけに紅く、艶めく。

さらりとやわらかな曲線を描いた髪が、
やけに濃く、輝く。


美しい彼女は背を向けて、
遠ざかっていった。


掴んでいたはずの腕はいつの間にか手のひらから消えていた。


ひゅるる、と寂しい風の音を合図に、シャットアウトされていた雑音たちが一気に鼓膜を叩く。



「……この俺が、フラれた……」


案外しっかりと、その実感がわいた。

本気の告白だったのに、意外とすんなり終わるものなのだな、と考えられるくらいは冷静だった。



『気に入った相手はどんな形でもそばに置きたいっていう、歪んだ人』


その音は軽蔑するわけでもなく、だからといって共感するわけでもなかった。

それがちょうど心地良い音色で、やっぱり、
彼女はいい女だと、思う。


ぶれない絶対的な愛が、綺麗な彼女をつくり上げているのかもしれない。




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