しかくかんけい!
日陰は少し寒いから、やんわりとした日向が当たるコンクリートに腰を下ろす。
そらも私に続いて、すとんと隣へ座った。
「なんだか心地良いね」
「うん」
そらは小さく頷いて、色鉛筆の蓋を開け1本手に取る。
彼のそういう仕草を見ていると、幼い頃の記憶が蘇ってくる気がして、思わず目を細める。
「そういえば愛莉、」
「ん?」
「ミスコンおめでとう」
「っ、」
ドレス姿綺麗だったよ、と言うそらは、まるで今ここに降り注ぐ太陽のシャワーのようなやさしい微笑み。
ありがとう、と返すので精一杯だった。
ミスコンは、あまり思い出したくない悲劇。
あの告白で、私たちの関係が壊れるかもしれないと思ったから。
私はそんな記憶を振り払うようにぱらりとスケッチブックを開き、色鉛筆を滑らせた。
それからしばらくは無言が続き、聞こえるのは、彩られた鉛と叩解《こうかい》された化学パルプがこすれ合う音だけだった。