しかくかんけい!
加速する気持ち
■■ ハナside ■■
放課後。
部活に行く準備ができた私は、カバンを肩にかけて廊下で待っている愛莉のもとへ急ぐ。
「あーいりっ、お待たせ!」
「忘れものない?楽譜持った?今日は全体合奏だよ」
「はっ…!」
そうだった!
合奏は合奏でも、今日は全体合奏の日。
吹奏楽部、通称吹部の中ではかなり大事な日なんだ。
楽譜を渡されたら、まず全部員でとおし演奏して曲の雰囲気をつかみ、そのあと各パートや個人で分かれて自主練する。
だいたい1週間後にまた全部員で合奏し、みんなの出来具合を確認したり、課題点を指摘し合ったりする。
そしてまた自主練、合奏、といった流れで曲を作っていくのがこの吹部スタイル。
その全体合奏にあたる今日は、初心者の私にとってかなり憂うつなんだよね……。
指揮台に立つ部長にタクトの矛先をビシッと向けられては、適確なコメントが降ってくる。
経験者の後輩や同じパートの先輩もいる中、よく私が原因で演奏中断する。