しかくかんけい!
でも本性は、ただの野蛮な猫かぶり野郎だ。
甘いマスクで人を寄せ付け、平気で女にさわり、欲にまみれる最低なやつ。
そんなやつを好きになったって、苦しい思いをするだけなのに。
「はあ……」
そういったことをごちゃごちゃと考えているから、振るわないんだ。
なんだか今日は、満足する絵を描けそうにない。
「そら……」
愛莉の心配そうな声が聞こえた。
この大切な存在にも手を付けてきやがったあいつが、本当に嫌いだ。
「ちょっと削ってくる」
「……うん」
愛莉からも数本受け取り、美術室へ向かった。
授業中の校内は静かだった。
だから無意識に、足音をあまり立てないようにそろりと歩く。
すると、ある教室の前を通過した瞬間、ガラガラ、とドアが開く音がして。
振り返ると派手な女が一人、出て行った。
制服の着こなしからして不真面目そうな女子生徒。
授業を抜け出してここで適当にサボっていたんだろうと、流し目で通り過ぎた。