しかくかんけい!




すうっと、大きく息を吸う。


『ほら、深呼吸』


愛莉の声が、聞こえた気がした。

初めてしょーくんの家に行ったとき、緊張でそわそわした私を、そうやって落ち着かせてくれた。


ふーっと、ゆっくり、空気を吐く。

不思議と涙は止まる。


まだ頭の中はいろいろ散らかっているけれど、暴れていた感情たちは大人しくなった。



「そらくん、ありがとう」


そうだよ。

そらくんには、大切な存在があるよ。


私よりも大切な存在が、

私よりも大切にしなきゃいけない存在が、

いつもそばに、いるじゃん。


「だけど、ごめんね」


まっすぐに、彼を見つめた。


「……っ」


そらくんのやさしい目が、一瞬、揺れた。


「そらくんはこんなに優しいし、夢に向かって頑張ってる姿もすごく格好いいし、すごく素敵な人だと思ってるよ」

「……なら、」


「だから、私じゃもったいないよ」


そらくんがそばにいるべき人は、私じゃない。


これまで愛莉とそらくんと一緒に過ごしてきた時間が、私をそう思わせている。




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