しかくかんけい!


「季節だよ。この前まで夏だった気がするのに、もう冬になりそうじゃん!」

「そうだね」

「食欲の秋だからお腹空いた〜」


泣き疲れなのかお昼が足りなかったのかわかんないけれど、部活の前に何か食べないと持たなさそう。


「これ」

「ん?」


あげる、と言って差し出された手の中には、あめ玉が乗っていた。


「いいの?」

「うん」

「わーい、ありがと〜!私オレンジがいちばん好きなの」


小さな球体を受け取って開封し、ぱくりと放り投げる。

甘くて、酸っぱくて、口いっぱいに柑橘の香りが広がった。


「これいつも持ってるの?」

「んー、たまに」


そういえば愛莉もよく、私にあめ玉をくれた。

うるさいからあげる、が決まり文句だったけど、くれるのはいつも私の好きなオレンジ味だった。


こういう何気ない瞬間に、彼と彼女が重なって見える。

やっぱりふたりは似ている、と思った。


「おいし〜」

「ふっ、ハナっておもしろいね」

「よ、よく言われるっ」

「あ、待って」



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