しかくかんけい!
ガタ、と机と椅子をセッティングして、私の心と真逆の景色を描く準備をして。
「よしっ」
色鉛筆とスケッチブックを広げて、しばらくは何も考えずに手を動かしていた。
…………ん?
いつのまにか上まぶたと下まぶたが結婚していたらしい。
はっとして、強制的に別居させる。
寝ぼけ眼をこすりながら、まだ眠たいと訴える体を無理やり起こす。
すると、前方ドアのところから物音がした。
「……あっ、あんっ……」
「……っはあ、っ……」
ガタガタガタ、と机が揺れぶつかるような振動音とともに、卑猥な男女の声。
「!?」
こ、これって、もももももしかして……!?
いやーーー!!!!
と叫びそうになった口を両手で押さえて、ぐっと空気を呑み込む。
お、落ち着くんだ、ハナ!
ここは無難にやり過ごそう。
そうだ、私は透明人間!
いや、透明な空気だ!
もはや人間ではないんだ、息を殺してじっとしていよう、と呪文のように脳内で唱え、再びぎゅうっと目を閉じる。