しかくかんけい!
「だから俺はその傷も心も唇も何もかも隅から隅まで舐め回してあげようと思ったんだけど」
「……生々しい表現やめて」
「そっちから誘ってきたのに」
「目が覚めたわ」
あなたのおかげで、とは言わなかった。
「ヒソウだね」
ふっと自嘲するように息を飛ばした彼。
「ひそう……?」
「愛莉のヒソウは、悲しい状況の中でも勇ましく頑張っているさま、の悲壮」
「……」
“愛莉のヒソウ”って、どういう意味かしら。
彼のヒソウ、とやらもあるのかしら。
そう思ったけれど、言葉にはしない。
「やっぱそらっちには敵わねー」
そう吐き捨てると、立ち上がって服を脱ぎ始める。
「ちょ、何して……」
思わずその逞しい肉体から目を背けた瞬間、バサッ、と音を立てて視界が闇になる。
「っ……」
彼の匂いがした。
頭から垂れ下がる黒いトレーナーは、大きくて生ぬるい。