しかくかんけい!



「家帰ってもいいし、ここに居てもいい」

「え?」

「どっちでもいいけど、俺は我慢できるタイプじゃないって一応言っとくね」




風呂、と言って遠ざかる足音。



恐る恐る分厚い布から抜け出したら、
シャー……という流水音が聞こえてくる。


「あ、そうだ」

「っ、」


ひょこっとドアから顔を出す彼にまとわりつく色気がやけに煙たい。

きっと湯気のせいだ。


「そらっちって意外と怪力だよね」

「……え?」

「ハナのためならすごく強い」


そう言い残し、奥へと消えた。

やけに耳に響く水の音は、彼の嗚咽のような錯覚がした。


怪力。強い。ハナ。家。我慢。

それらのワードは焦燥感を誘発させ、反射的にスマホを取り出す。


『我慢できないから、来てほしい』

『ハナが、俺の家』

『好きが止まらないのに』


──『そんなに好きなら手を出せば?』


別に、緑色の円を素早く連打したってコール音が短くなるわけじゃないけれど。


悠長な音が途切れ、求めていたあなたの声が鼓膜をなでる。



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