しかくかんけい!



──「もしもし」

「そ、そらっ!私だけど、今、今っ……」

──「どうしたの愛莉、そんなに慌てて」


やわらかいあなたの息が吹きかかる。

そんなはずないのに、でも耳輪が、珠間切痕が、耳朶が、あり得ないほどくすぐったいんだ。


「……っ今、ひとり?ハナは大丈夫っ?」

──「うん、ひとり。ハナは帰った」

「っ……よ、よかった……」


思わず安堵の言葉をこぼすと、少しの間をあけて、あー、と苦笑いが聞こえて。


──「……ふふ、心配してくれてるの?」


誰かと思えば、私の声真似だった。


夏の夜、抱きしめてくれたあなたから心配という感情をもらった、あの日。

あなたの好きな人がハナだと確信した、あの日。


きゅ、と胸が萎縮する。

覚えていたのね、と嬉しさが込み上げて、でもそれは一瞬で消えて、やっぱり、苦しい。


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