しかくかんけい!
まっすぐな音
* * *
5月の末、季節は移り変わろうとしていた。
つい先週、必要最低限の勉強のみで挑んだ中間テストがいろんな意味で終わった。
でも赤点はギリギリ回避したから、補習の心配はいらないもんねっ。
それからは毎日、ずっとフルートを吹いた。
電車の中で指使いだけのエア練習をしたり、
暗譜するために授業中ひたすら楽譜を眺めたり、
ごはんを食べながら録音した演奏を聴いたり。
フルート漬けの日々だった。
そしてついに、この日を迎える。
次は私の出番だから、薄暗い舞台裏で待機していた。
「緊張してる?」
「うん……」
「大丈夫。いつも通りやればいいから」
「うん……」
落ち着いた声のしょーくんとは正反対に、私は返事をするので精一杯。
リハーサルで他校の出場者の演奏が耳に入って、わずかな自信をさらに失って。
舞台裏のモニターに映る、全席が埋まった会場の様子に圧倒されて。
フルートを握りしめる両手は冷や汗でびっしょりだった。
すると。