しかくかんけい!
「少し早すぎちゃったかな」
一般客席はまだ3割程度しか埋まっていない。
プログラムを開いて、出場者一覧の中からハナの名前を探す。
「何番目?」
そらが私の広げているプログラムを覗き込む。
綺麗な黒髪から、ほんのり石鹸の香りがした。
……近いわ。
「えーっと、」
「3番目だ」
私が見つけるより先にそう言って、すっと元の位置へ戻る。
意識しているのは、私だけ。
その何気ない仕草が
どれほど私の感情を振り回しているかなんて
あなたは知らないんだろうな。
気づかれないようにそっと、
頬杖をつく横顔を盗み見る。
漆黒で、少し長めの、うねる髪。
白くて、滑らかで、雪みたいな肌。
長くて、真っ直ぐで、濃いまつ毛。
すらっとした鼻筋に、シャープな輪郭。
本当に、綺麗な人だわ。
心底そう思ったが、
やはり“それ”は昔からあって、
今も変わらない。
綺麗なのに、綺麗なのだけど、
どこか、苦しそう。