しかくかんけい!
出会った頃から時折、彼は苦しそうな表情をするんだ。
自分を押し殺しているような、
溢れてくる何かを押さえ込むような、
そんな感じ。
そんな顔しないで、と思った。
でも、言えなかった。
だんだん人が集まって、少しざわざわする。
全部の席が埋まった頃、ソロコン開幕のアナウンスが流れると。
騒がしかった会場はしんとする。
出番はすぐにきた。
フルートを手に舞台へ現れたハナを見て、私は少し驚いた。
今週月曜日からずっと、聞き飽きるくらい「緊張するよ〜!」というセリフを繰り返していたハナ。
あんなに緊張していたはずなのに、舞台に立つ彼女は今、堂々としている。
ぺこりと一礼し、
伴奏者に目で合図して、
フルートを構えて。
静まり返った空間に、ピアノの音が響いて。
そして重なる、素朴な音。
ふと、隣の存在が動いたのを感じた。
またそらの方を、盗み見た。
瞬間、呼吸することを忘れた。