しかくかんけい!
「……わからない」
「そう……。ちょっといい刺激になればと思ったけど」
「でも」
「……、でも?」
あなたはじっと、一点を見つめて。
「このフリソンは、別格だ」
恍惚と言い放った。
「……べっ、かく……、」
うまく舌が回らない。
うまく頭が回らない。
落ち着きたくて、再び、目を閉じる。
別格、とは、何。
今までそんなセリフ、あなたの口から聞いたことないわ。
昔一緒に、美術館へ行ったときも、
河川敷で絵を描いたときも、
絵のコンクールで入賞したときも、
あなたは一言、
「フリソンしたかも」
ただ、それだけだったのに。
甲高い長音が、鼓膜を震わせる。
途端、小刻みの粒になって、高潮させるように音階を上る。
曲はクライマックスだ。
私はまぶたを持ち上げて、
そっと、
あなたを見る。
「……っ」
ああ、お願い、やめて。
そんな目で、見ないで。
そんなまっすぐな目で、見ないで。
ハナを、見ないで。