SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を

「……に、 しても……」


湧人はぐるり視線を動かす。


「なんか……毒々しくない? この部屋……」


「……え?」


「ごめん気になって。 カーテンもカーペットも紫だし……壁はマスキングテープ? 赤いけど……」


「あ〜、なんか適当にやっただけ」


「大丈夫? 落ちつかなくない?」


「別に。 あたしは白い方が落ちつかない」


すると湧人が首を傾げた。


「白いのが落ちつかないって、何で?」


「だって、血で汚れるから」


「……⁉︎」


「実は前も苦手だったんだけど、今はもっと苦手になった。 知ってる? 血がつくとなかなか汚れが落ちないんだ。 白いものは特に……」


「……っ、」


「あたし、白い服とか苦手で……ほら、だから前も黒っぽい服ばっかり着てたんだけど、それがますます……

いつもケガしてばっかりだから、血の色が目立たないようにしてるんだ」


「……っ、」


「この部屋だったら安心。 いくらケガしたって大丈夫。 だから……」


……⁉︎

あたしは気付いて口を止めた。


……あ、 れ……


湧人が辛そうに顔を歪めている……


「……ゆう、と?」


「……ごめん……」


湧人はサッと目を伏せた。

横を向き、何かをぐっと堪えるように部屋の隅を見つめている。
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