SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を
「誰かに何か言われた? もしかして風紀の子?」
「ううん、 風紀委員じゃないんだけど。 でも、 あたし本当に世間知らずで、 そんなルールがあるなんて知らなくて……」
「ルール?」
「だから今度からちゃんと言うね、橘先輩って——」
「——美空っ、」
湧人が急に語気を強めた。
「……?」
「違う! そのルール嘘だから!」
「……う、そ?」
「そう、嘘! そんなルールどこにもないし! だから今まで通り名前で呼んで?」
「……でも、」
「オレがそうして欲しいんだ。 ……嫌なんだ、急に壁作られたような……一気に遠くなった気がして……」
「……そう、なの?」
「うん。 だから、いつもみたいにオレを呼んで?」
「……分かった。 じゃあ、」
あたしはいったん言葉を区切る。
「湧人!」
改めて慣れた名前を口にした。
「……ん、 それでいい」
満足そうに微笑む湧人。
そんな湧人の唇にあたしは自然と目がいった……