SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を

「…………」


……あの時……


あれから度々、あの満月の夜の事が思いだされた。

湧人のあたたかくてやわらかな唇……

あの時、 確かにあたしと重なった。


五年前にも合わせた唇……


あの時は何がなんだかよく分からなかったけど、このあいだ湧人からされたあのキスは、思い出すたびドキリとする……


……変なの、 何だこれ……


キスはおまじないのキスなのに。

そう、 五年前、 湧人が教えてくれたんだ。

キスはケガや病気が早く治って元気になるおまじないだって。


……そうだ、 あれはおまじない……


満月で元気がなかったあたしに湧人がおまじないをしてくれたのだ。

だからドキドキするのはあたしがどこかおかしいのだ。


「……?」


目の前では湧人が首を傾げている。


「美空? それ、どうしたの?」


ふと気付いてあたしが持っていた教科書を指差した。
< 165 / 295 >

この作品をシェア

pagetop