SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を
◇来訪
橘湧人は高校二年になっていた。
颯爽と歩くその姿は、すれ違った女子の誰もが振り返るほど美形であり、まだ小学生だった五年前とはまるで雰囲気が違っている。
簡単には声をかけられない、人を寄せ付けないような孤高のオーラを身にまとい、同時に冷たさと儚さを宿したようなその表情……
滅多に笑わなくなった彼の、装った強さの裏側には、人知れず悲しみと寂しさがいつも胸に潜んでいた。
「…………」
ふと足を止めて空を見上げる。
五年前の美空同様、時折、こうして空を眺めるのが彼の癖になっていた。
穏やかな気持ちになるひと時、
同時に、苦しさを感じるそのひと時、
よぎる数々の思い出が彼の心を締めつける……
「——湧人、くん?」
ふいに現実に引き戻された。
見ると一人の男性がじっとこちらを見つめている。
清潔感の漂う、長身で眼鏡をかけたきれいな顔立ち、
男性は戸惑ったような、驚きの表情を浮かべている。
……誰だろう。
「あの、」
すると、男性はハッと我に返った。
すぐに冷静さを顔に貼り付ける。
「……ああ、すみません。聞いていた方とはだいぶイメージが違ったもので……。 初めまして、わたしは……わたしは月島一樹という者です。あなたと少し話がしたいと思いまして」
「……っ、」
聞き覚えのある名前に今度は湧人がハッとする。
困惑と不審な顔で一樹を見つめた。