SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を

————それから……


あたしは湧人と保健室に来ていた。

あの後、何故だか変な空気になり、女たちは慌ててそこから逃げていった。

なんだなんだ? とだんだん人が集まる中、脳震とうを起こしているかもしれないと、湧人が保健室へと連れてきたのだ。

あいにく先生は留守中で、今は湧人と二人きり……


「湧人、 ごめん」


うつむき加減にあたしは言う。


「……ん?」


「あたしのせいで脳震とう」


「ああ、それは違うから」


湧人は首を横に振った。


「……え?」


「さっきはとっさの口実っていうか……美空に聞きたい事があったから……」


「聞きたい、 こと?」


「うん。 さっき、ちょっと気になって。 もしかして美空、オレのせいでまた嫌な目にあってるんじゃないかなって……」


探るような湧人の視線……


「……嫌な、 目?」


「うん。 さっきのコたちに、オレの事で何か言われたんじゃない?」


「……え? 別に何も……」


「本当に?」


「あ〜、 でも、 ただ……」


「……ただ?」


「あいつら、おかしなこと言うんだ。 ううん、おかしな事っていうか、初耳って言うか、それが引っかかって……」


「なに?」


「あのさ、湧人。 瞳を覗き込まれるのがイヤって、 本当?」


あたしは疑問を直接ぶつけた。
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