SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を

「……ん? 何が?」


「余裕がある。 あたしよりも、いっぱいいっぱい……余裕がある」


「……余裕?」


「うん」


「そんなのないよ。 美空の前じゃ、オレ……全然余裕なんてないから」


真顔で言い終えた湧人とピタリ視線が合う。

その吸い込まれそうなほどきれいな銀色に、あたしの頭はぼーっとなった。


「……湧人、 きれいな目、 してるね……」


「……ふっ、 美空それ、 今まで何回も言ってるね」


「だって本当にきれいだから。 もっと、見てもいい?」


「……いいけど……」


あたしは顔を近付ける。

宝石のような銀の瞳はまっすぐあたしを捉えている。

……と、


「……⁉︎」


何故か湧人もゆっくり顔を近付けてきた。

まるでそうするのが自然なように、すうっと距離を詰めてくる……


……えっと……


……これって……


首を少し傾かせ、唇がぶつかるまであと少し……


——ガラッ!


「あら? どうしたの?」


突然の声があたしたちを引き離した。

見れば保険の先生が腕組みしながらこっちを見ている。


「恋の病は先生には治せないのよ? だから他をあたってくれる?」


先生はニヤニヤしながらそう言った。
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