SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を
「全然暑くなんてありません! 本当は顔にもマスクを……目出し帽を被って過ごしたいくらいです!」
「……え、」
「肌を露出するのは危険なんです! 美空さまと同じ年の頃、わたくしは浜辺で不良たちに襲われて……危うく彼らの餌食に……」
「…………」
「でもその時、正義の味方が現れたのでございます! それはそれはとても勇敢な姫君でした! チラッと見えた横顔は今の美空さまそっくりで……」
「…………」
「彼女はあっという間に不良たちをなぎ倒し、自分が着ていた黒パーカーをわたくしに被せ、颯爽と立ち去って行かれたのです! その姿はまさに正義のヒーローそのものでした!」
「…………」
「わたくしはその時に誓ったのでございます! 肌を露出するような格好は今後一切控えようと!」
「……あ、 そう、」
あたしは短く衣子に返事する。
……あたしにそっくりって……
実はそれ、 本当にあたしだったんだけど。
五年前、しるしに呼ばれ、あたしは浜辺で襲われていた衣子を助けた事がある。
何日か衣子と過ごすうち、それを思い出していた。
「じゃあ、行ってくる」
まだ朝早い時間帯、あたしは一人部屋を出た。