SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を
……に、 しても……
湧人の次に浮かぶのは、衣子以外のメイドの顔だ。
基本的にメイドさんはみんなあたしにそっけない。
……ううん、 そっけないというよりは……
湧人がいる時といない時とでは態度が全く違うのだ。
いる時はみんなにこやかなのに、いないと顔が笑ってないし、返事もさっぱり返ってこない。
昨日なんか、調理担当のやつが家賃を払えと言ってきた。
なんでも、居候が家賃を払うのは当然だそうで、しかもこの家のルールで、居候はこの調理担当の言う事をなんでも聞かなければならないらしい。
……そんなの全然知らなかったし……
でも、アパートに住んでた時も家賃は払わなくちゃいけなかったし、やっぱり住まわせてもらってるんだからお金を払うのは当然だ。
「……う〜ん、 いくら払えばいいのかな?」
さっきもらった給料袋をサッと天にかざしてみる。
——バッ!
「……えっ、」
自転車に乗ったお兄さんが給料袋を奪っていった。
「……ちょっ、待って、それあたしの——」
追いかけるも、自転車のスピードが速すぎてあたしは全然追いつけない。
「……はあ、」
……ついてない……
仕方なく諦めて、あたしはそのまま学校に行った。