SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を

……そんな中、


「……ハア、」


湧人がため息を吐き捨てる。


「行こう、 美空」


そう言うとスッとあたしを抱き上げた。


「……えっ……」


心臓がドキッと跳ねあがる。

これってもしかして、グリムが憧れていると言っていた“お姫様だっこ”というやつだろうか……


「いいよ湧人。 自分で歩ける」


「だめだよ。 傷口が開くだろ」


「だって、今もさんざん走ってきたし」


「だめ。 今迎えの車も呼ぶから」


ちょっとムッとしたような湧人。

すると、


「待って橘くんっ!」


のぞみが湧人を引き止める。


「橘くんもそう思ってるの⁉︎ 私がウソをついてるって……」


「……さあ、」


湧人は冷めた視線をのぞみに向けた。


「けど、どうみてもこっちの方が重傷だし、キミは普通に歩けているし……?」


「……⁉︎」


「今、オレを引き止めようとして普通に追いかけてきたよね」


「……あっ、」


「じゃ、オレたち帰るから」


湧人はそこから歩きだす。

湧人の肩越し、のぞみは悔しそうにじっとこっちを見つめていた。
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