SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を


『……いかがですか?』


キスの後、一樹があたしに聞いてくる。


「……え、」


『驚きはしたようですけど……あまりドキドキはしていませんよね』


「……⁉︎」


……たし、 かに……


湧人の時はドキドキしたし、頭がすごくぼーっとなって、時間が止まったような、何も考えられなかったのに……

今はちゃんと冷静になれるあたしがいる……



『その感情が全てです。 わたしや他の誰でもない、湧人くんにだけあなたは心を揺さぶられる……

それはすなわち、湧人くんがあなたにとって特別な存在だという事です』


「……特別な、 存在……」


その瞬間、何かがストンと胸に落ちた。

頭のモヤがなくなったような、清々しいけれど、心はどしりと構えた重みがある。


「……そうか。 あたし、 湧人に恋、 してるんだ……」


あたしの言葉に一樹はコクリと頷いた。

その顔は優しくふんわり微笑んでいる。


『……さて、まずは第一段階クリアですかね。 これより先は、またあなたがこなしていくべき課題です』


「……え?」


『とことんまで問題に向き合うのです。 自分がどうしたいのか、どうするべきか、自分の気持ちに正直に……

美空の素直な気持ちはきっと彼に伝わりますし、彼も受け止めてくれるはずです』


「……向き合う……?」


……どうしたいのか……?


……どうするべきか……?


首をひねるあたしに一樹はコクンとまた頷く。

そうこうしているうちに、一樹の体がだんだん端から消えてきた。
< 257 / 295 >

この作品をシェア

pagetop