SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を


「……ハァ〜、」


溜息ばかりが口から出る。

せっかく一樹が“向き合え”って、大切な事、いっぱい教えてくれたのに……

逆に今は向かい合う事を避けてしまっている自分がいる。


……だめだな……


ほんと、好きだって意識した途端、あたしはなんにも出来なくなった。


「…………」


……だけど……


まぶたを開いて空を見る。

空の青さが、陽の光が、澄んだ空気があたしに力をくれている。


……このままじゃいけない……


にわかにうずくその思い……

高い空に見入るほど、それははっきりと強く太く、次第に大きくなっていった。


“……サワサワサワサワ……”


気持ちを後押しするように、ハンカチの木が揺れている。


……あたしに出来る事……


……あたしが湧人に出来る事は……


「……あ、」


ふと青空に映った、いつかの湧人との思い出が、あたしに答えを運んでくる。


……そっか……


気持ちを固め、あたしは空に微笑んだ。
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