SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を
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それから、あたしは湧人が学校へ行くタイミングを見計らって湧人の部屋の前で待ち伏せた。


——ガチャ……


「……!」


出てきた湧人が驚いたようにあたしを見て、すぐに視線を横にそらす。

あたしが何も言えないでいると、湧人はあたしの横を通り過ぎた。

そのまま玄関の方へと歩いていく……


「……っ……あっ、 湧人!」


ようやくあたしは声をかけた。


「…………」


意外にも湧人が立ち止まり、あたしに耳を傾ける。


「……その、 ……あたし、 ごめん……」


「…………」


「……ずっとこうで……いつまで経っても分からない事が多くて、世間知らずで迷惑かけて……そのせいで、 嫌な思い、 させたよね……」


「…………」


「……あたし、 大事な事は後になって気付くっていうか……それも、人に教えてもらわないとなかなか気付けなくて……だから失敗するんだけど……」


「…………」


「……でも、 それでもやっと気付けたから、 だから……」


「……だから?」


「……あっ、 ……えっと……」


「…………」


「……ううん、 なんでもない。 ただ、それだけ言いたくて」


「…………」


「……じゃあ、 いってらっしゃい……」


あたしはパッと湧人に背を向ける。

逃げるように自分の部屋に駆け込んだ。


「……ハア〜、」


どっと全身から力が抜けて、あたしはベッドに倒れ込む。

一瞬だけど目が合った。 立ち止まってくれた。 ちゃんと話を聞いてくれた。 一言だけどちゃんと返事してくれた。

そんな事がうれしくて……


「……っ……」


ジンと胸が熱くなる……


「……もう十分だ……」


何故か涙が溢れてきて、あたしはベッドに突っ伏した。
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