SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を
……どうして……
あの光景が頭に焼き付いて離れない。
キスしてた……アイツと。 しかも美空の方から……
信じられなくて、でも確かめたくて、オレは美空に問い詰めた。
結果、耳を疑うような言葉を美空は口にした。
“かわいそうだからキスをした”
……かわいそう……
かわいそうってだけで美空は簡単にキスをするのか——
その質問に“うん”と返事が返ってきた。
……そして、 オレとの事も……
オレと交わしたあのキスも、美空にとってはかわいそうだったから。
それまで抱いていた期待が一気に崩れ去った。
うぬぼれていたオレの気持ちをへし折って、這い上がれないほどに打ちのめされる。
やるせない惨めさだけが残された。
「……橘?」
滑り込んできた声にハッとする。
気付けば授業はとっくに終わっていて、HRも終わったのか何人か帰り始めている。
「どうした? ぼーっとして……なんか最近、橘らしくないよな?」
このクラスでは一番仲の良い友人がオレに聞いてきた。
「別に、何も」
「何もな訳ないじゃん、天使さんだろ? この頃やけにあのコに冷たいしさ! 喧嘩? 一体何があったの?」
知っているならどうしたとか、わざわざ聞いてくるなと思ってしまう。
オレが苛ついたのに気付いたのか、そいつは“ごめん”と離れていった。