SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を
「本当に私は幸せ者だよ。キミのような優秀な人材に巡り会えて……」
そう言う社長は40代の細身の男だ。
空腹で道に倒れていたのを偶然あたしが発見した。
「キミがいなかったら私は今頃どうなっていた事か……。 倒産寸前だったこの会社もキミのおかげで順調だ……」
今度は涙ぐむ社長は変な病気を持っている。
“ 美形恐怖症 ”
そう、社長は極度の美形恐怖症なる病を患っている。
なんでも昔、空き巣に入った家の前で美しい女神に遭遇し、これまでの罪の戒めを受けたそうで……
それ以来、美しいものを見ると気絶したり呼吸困難でじんましんが出るのだそうだ。
……女神って……
それ、実はあたしだったんだけど……
あたしは前にしるしに呼ばれて昔泥棒だった社長を捕まえている。
社長は気付いてないみたいだけど、あたしは思い出していた。
あたしが美しいかは分からないけど……
でも、アルバイトに来る時は変装道具が欠かせない。
「じゃあ、行ってくる」
「ああ頼むよ、気をつけて」
今日も社長はにこやかにあたしを送り出した。