SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を
「……え?」
「あれから五年が経ち、湧人くんの中ではもう、美空はとっくに過去の存在なのでしょうか……? 忘れたい、或いは忘れなければならない、辛く悲しい思い出だと……」
「……なっ、」
湧人はキッと一樹を睨みつけた。
「忘れたいだなんてっ……今まで一度も思った事はありません! オレの中でまだ美空はっ……まだ全然過去になんてっ……」
湧人は声を詰まらせる。
その様子に一樹は少し目を伏せた。
「……わたしも、辛かったですよ」
沈んだ声で一樹が言う。
「あのような一大事に……。 ドイツにいたわたしは国の命令で出国出来ず……D.S.Pの人間でありながら何も出来ず……美空を救えず……
ずいぶん自分を責めました。苦しい時を過ごしました……」
「…………」
「ですが、苦しみの中にいても時間は流れるものですし、相変わらず起こる事件や、日々やらなければならない事もありますから……
結局、人は立ち止まってばかりはいられないのですよね。
どんなに絶望していたとしても、自分で自分を奮い立たせ、何とか乗り越えるように……そう、人は出来ているものです。
人間力といいますか……自分次第で苦しみさえも生きる糧に出来るのだと……今はそう思っています」
「……そんな、まだオレはそこまで……」
「ああ、またそんな暗い顔……。美空が見たら悲しみますよ」
「……え、」