SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を
「前に言っていましたよ。美空、湧人くんの笑った顔が好きなんだと」
「……笑った、顔?」
「ええ、それはもう……。 大変だったんですよ? あなたに会う約束を取り付けるのも」
「……え?」
「何度も何度も、あなたには何もしないよう、頼まれましてね。もしあなたに何かして、悲しい顔にさせてしまうのがよっぽど嫌だったようですよ」
「……美空が……」
「過去に執着するな、とは言いません。ですがあなたはもっと現実を、今を大切にすべきです。
今を生きるあなたは、自分の力でいか様にも幸せを見つける事が出来るのですから」
「……幸せを、見つける?」
「ええ、特にあなたには幸せになってもらわねば」
「……え?」
「ああ、いえ……でも、幸せは自らが引き寄せるものだと思いませんか?
うつむいてばかりでは折角の幸運も見つけられません、もっとよく周りを見なくては。
当たり前の日常の中に、案外幸せは転がっているものですよ」
一樹はにこりと湧人に微笑む。
「……はあ、」
戸惑ったように返事をして湧人は冷めたコーヒーを一口飲んだ。