SignⅡ〜銀の恋人と無限の愛を
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……幸せを見つける……


もう暗くなった帰り道、湧人はさっきの一樹の言葉を思い出していた。

何故だか少しだけ気持ちが軽やかだ。

美空の話をした事が、束の間でも思い出を共有出来た事が嬉しかったからかもしれない。


……幸せ、か……


考えないようにしていた言葉が胸の辺りにくすぶっている。

それはこの五年、一番遠くにあったものだ。


人も、思いも、時も、未来も、何もかも……


幸せに繋がる全てを湧人は遠ざけて生きてきた。

遮断する事で自らに負荷を与えてきた。

そうする事がもっともだと、罪悪感に似た後悔をずっと抱えてきた。


——オレが幸せになっていいのだろうか


複雑な思いが湧き起こる。


……オレが、


……オレだけが——


真っ暗な空の向こうに問いかける。


「——あのっ!」


突如現れた人影に湧人はビクッと肩を揺らした。

街灯の下、その存在を確かめる。


「……⁉︎」


見れば放課後に告白してきた、ショートボブのあの少女だ。
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