これを恋と呼ぶのなら
星々の下で川を見る
プシュ、と音を立て、缶酎ハイのプルタブを起こした。
眼前に流れる暗い川を見つめ、ぐびっとお酒を呷る。
ひと口ふた口と喉に流し込むと、白々しく後付けしたように柑橘系の香りが嗅覚を刺激した。
私は今、大きな川を臨んだ堤防に座っている。
時刻は午後十一時半を幾らか過ぎたところだ。
両親が眠ったのを見計らい、家を飛び出してきた。近くのコンビニで酎ハイを5缶買い、堤防へと辿り着いた。
こんな深夜に一人で暗い川を見ながらお酒を飲んでいるなんて、はたから見れば完全にヤバい奴だ。
さっき通りすがったジョギング中の男の人も、さぞや驚いたに違いない。
冷静な頭でそう理解していながら、私は虚ろに川を眺めていた。
周りの目とか羞恥心とか、もはやどうでも良かった。
今すぐ消えてしまいたい、死のうかなと考えていた私は、川を見つめ自らが飛び込む想像を巡らせた。
等間隔をあけて立つ街灯の明かりが、小波を立てる水面に落ちて、ゆらゆらと怪し気に揺らめいている。
細長く伸びた白い光を見ていると、何故か癒された。
生きていたって何にも良い事がない。
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