これを恋と呼ぶのなら

 希美の言葉を聞いて、ハッと顔を上げた。

 彼女は力なく笑い、何故と問いただす私に理由を教えてくれた。

『あんな軽薄な男より、凛恋の方が大事だから』

 そう言って、私の手を握る希美を見て、私も涙をこぼした。


 三日前の夜を思い出していた。

 裏切られたと絶望して、投げやりになっていたあの夜。

 広大な川を臨む堤防に座り、このまま身投げでもしてやろうかと思う後ろ向きな私を、幼馴染みの柚瑠(ゆずる)が励ましてくれた。

 私の心を軽くしてくれたのは、今もスマホの向こう側にいる"ゆず"の存在だ。

 会社を辞めなくて良かった。

 親友と仲直りできて良かった。

「……ライン、誰から?」

 しみじみとした気持ちでスマホを握りしめていると、やはり好奇心が勝ったのか、希美が私の顔を覗き込んできた。

「……うん、幼馴染み」

「幼馴染みって……。前に聞いた柚瑠さんって人?」

「そう。社会人になってから忙しくて疎遠だったけど……最近連絡取るようになったから」

「ふぅん? いいね、なんか。そういうの」

「……え?」

「男友達っていう存在……?」
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