これを恋と呼ぶのなら
これまでの恋愛経験から言って、私は全て受け身で流されてきた。
自分からはアクションを起こせず、元カレの意見に合わせて、さぞや物わかりの良いつまらない彼女でいた事だろう。
そんな自分に嫌悪し、ゆずに対しては殻を破りたいと思った。
【急だけど。金曜日飲みに行かない?】
勿論、恥ずかしい気持ちはあったけれど。勇気を出してメッセージを送った。
*
「……しっかし、凛恋から飲みに誘われるとは思わなかったぜ」
一体どういう風の吹き回しだ、とでも言いたそうな彼をシレッと無視して、私は三つ折りのメニューを広げた。
「私、カシオレにする。ゆずは?」
「俺は勿論、生で」
そこで目の合ったバイトの店員さんに向かって、彼がスッと手を挙げる。
メニューを見ながら私がカクテルを指差すと、ゆずが生ビールのほかに、軟骨の唐揚げと大根のパリパリサラダと枝豆をオーダーする。
若い店員さんが去った後、ゆずの目がジッと私を見ているのに気が付いた。
「なに?」
私は戸惑い、自分の頬に触る。