これを恋と呼ぶのなら

「ん、いや? 思ったより元気そうで良かったなって」

 うん、と頷き、自分の手元を見つめる。

「ちゃんといつも通り仕事もこなしてるし、親友とも仲直りできたから……」

「そっか」

 ゆずはお絞りの袋を破り、手を拭きながら微笑を浮かべた。

 その笑顔をぼうっと見ていると、いつものゆずなのに、ゆずじゃないみたいで恥ずかしくなる。

「あちぃな」

 言いながらゆずがネクタイに指をかけ、グイッと緩めた。

 ーーかっこいい。

 そんな何気ない仕草にも心臓を掴まれる。

 きっと私の見方が変わったからだ。

 ただの幼馴染みじゃなくて、一人の男性として意識すると、ゆずはどこまでもカッコ良く見えた。

 元々容姿は整っているし、背も高い。

 けれど好きって気持ちのフィルターが掛かるだけで、こんなにもドキドキさせられるんだ。

 チラッと向かい合うゆずを盗み見て、私もお絞りを手に取った。

 そばにいるのが当たり前の幼馴染みだが、だからと言って恋愛対象と見るのに躊躇いは生じない。

 希美には言わなかったけれど、ゆずは高校時代、いっとき好きになった相手だ。
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