これを恋と呼ぶのなら

 投げやりな思いを抱え、夜空を仰いでまた酎ハイを傾けた。

 深い濃紺に散りばめられた星屑たちが、キラリと輝きを放っている。

 死んだ方が楽かもしれないと思う私の動機なんて、きっとちっぽけでとるに足りないのかもしれない。

 仕事と恋人と親友を一度に失くした事なんて、世の中を見渡すと多分よくある事だ。

 同じ部署で働く上司であり、且つ恋人の彼が、私の同僚で親友の彼女に浮気していたなんて、きっとこの広い世界ではよくある不幸なんだ。

 残業中にひと目につかない一室で、彼と彼女がいちゃついていたのを偶然見てしまったのだって、多分私の運が悪いからだ。

 目撃を二人に気付かれたからって、明日に退職願いを出そうと思ったのも完全に自己都合。

 こんな災難は、言ってみれば事故みたいなものだ。

 350の酎ハイを空き缶に変え、私はそばに置いたビニール袋からもう1缶を取り出した。


 思えば、私の人生は災難続きだ。

 高校生の頃は、恋を知った瞬間に失恋を経験した。

 ずっとそばにいた幼馴染みの男の子に、いつの間にか彼女が出来ていて、その時初めて彼を好きだった事と失恋した事を自覚した。

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