これを恋と呼ぶのなら

 悲惨だな、とゆずが呟いた。

 本当にその通りだ。ついでを言えば今この状況も悲惨そのもの。

 自嘲気味に笑おうとするがうまくいかず、私は重いため息を漏らした。

「お前ほどじゃないかもしれないけど、実は俺も一週間前にフラれたばかりだ」

「………は?」

「奇遇だな? って事でホラ。取り上げておいてなんだけど、乾杯しよう。お前結構な酒買ってたろ?」

 私の買ったコンビニ袋をガサガサと漁り、ゆずが度数の高い酎ハイを手にした。私の手にもさっきの缶が戻ってくる。

「乾杯って……何によ?」

「ついてない者同士の?」

 ゆずはニヤッと笑い、プルタブを起こすと私の缶に軽くぶつけた。

 グビグビ飲み干す彼を見つめ、暫し放心する。上下する喉仏を見て、不意に胸が熱くなった。

 消えずに(くすぶ)った想いが蘇るようで、途端に居心地の悪さを覚える。

 夜空を仰ぎ見る彼から目をそらして、私は2缶目を開けた。

「失恋ってなんで?」

 ひと口お酒を含み、私は彼を横目に捉えた。

 傷を舐め合うみたいでシラけるが、私の災難を知られた以上、彼からも聞き出してやろうと考えた。
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