これを恋と呼ぶのなら

 ゆずは「さぁ?」と首を傾げ、「心当たりがない」と答える。

「……何それ」

「けど告白されてもいつもフラれる側なんだよなぁ」

「それは……。彼女に優しくないから?」

 そう言ってから、そんなはずは無いとすぐに気付く。

 ゆずは口は悪いが、基本的には優しい奴だ。

「知らね。ただ……」

「うん?」

「フラれる時はいっつも同じ理由で切られる」

「同じ理由?」

 やっぱり、彼に何か欠点があっての事だろうか?

 ゆずはあっという間に酎ハイを飲み干し、勿体つけてから言った。

「"アナタは私の事なんか好きじゃないでしょ?"って。"いつも他の誰かの事を考えてるんでしょ?"って」

「……なにそれ」

「別に俺としてはそんなつもりなんかサラサラなかったんだけどな。
 ……確かに。本当に欲しいものは手に入らないって散々諦めてきたから。……多分、その結果」

 そう言って、カシッと缶を潰すと、ゆずは私との間に空き缶を置いた。

 ゆずの動作を逐一目で追っていると、不意にバチっと目が合い、頬が熱くなる。

 ゆずの深い黒目が、私の瞳をまっすぐに射抜いている気がして、鼓動が早くなる。容易に目をそらせない。
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