プリン博士の憂鬱な日々
「そりゃ、まずいな……」

「テレビの音声を消せプリ!」

「そんな事を急に言われても、リモコンがない!」

 テレビの画面の中は前奏が流れている。

 終わりだ。

 テレビが故障するのは時間の問題だ。その横でプリン博士はセシウム原子ダンスを踊り始めた。

「……」

 今田は呆れて物が言えない。

 すでに画面の中では歌い出していた。

 下手。

 音程はずれているし、リズムも合っていない。詩は棒読みだ。

 今田は可笑しくなった。ここまで歌えないとは想像を絶していた。笑うのを堪えるのが大変だった。お笑い番組を観ているようだ。

 踊っていたはずのプリン博士は真っ青な顔をして床にしゃがみ込んでいる。薬が効かなければ信用問題になるからだ。

 それを見た今田はお腹が痛くなるほど笑った。

 これは歌番組だ。

プリン博士の予想は外れ、テレビは故障しなかった。
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