プリン博士の憂鬱な日々
「ゴホン、ゴホン」

 と、紙袋を抱えながら咳き込んで入ってくる男がいた。

「どうした銅坂(どうさか)君、かぜでもひいたかプル」

「もう、死にそうなくらい大変なんだ。ゴホン、ゴホン」

 銅坂は紙袋からタッパを取り出した。

「これ何ですか?」

 今田は、タッパの中に入っている黄色い物が気になった。

「これ、プリンだよ。ゴホン、ゴホン」

「私の大好物だプル」

 そうだったのだ。プリン博士は何よりもプリンに目がなかった。

「明日、のど自慢大会の予選があるんだ。このままじゃ歌えないんで、博士に何とかしてもらおうと思って……ゴホン」

「そんなのは簡単だプル」

 そう言って、今田に薬局にのど飴を買いにいかせた。


 仕事だからと割り切って、今田は買いに行った。疑問がある。銅坂は何者なのか。深く考えると、矛盾だらけになりそうになるので、思考を停止した。
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