プリン博士の憂鬱な日々
「はい」

 プリン博士は眠っていたと思ったが、目を強引に開けた。眼球は真っ赤である。

「いや、その、今のは独り言で……」

「こっちの赤い箱に青いカプセルがかぜによく効くので、青い箱は、赤。これが歌がうまくなるプ……」

 プリン博士は立ったまま目を閉じ、いびきをかいた。

「どうすんだよ」

 今田はプリン博士に言ったが、もちろん反応するわけでもなく、完全に眠っていた。仕方なく机の箱を見た。どちらの色の箱も手の中に入る大きさだ。

 赤い箱はかぜ用。青い箱には美声用とだけ書いてあった。

 今田は薬の用途はわかった。銅坂の住所は知らないので、届け先が不明なので困った。

 しかし、心配は杞憂(きゆう)に終わった。

 すでに銅坂とマネージャーは目の前にいた。

「ハックション!」

 銅坂が大きなくしゃみをした。そのせいで机の上の箱が動いた。いや、用途が書いてある紙がずれた。 

「今日、これから歌の仕事があるんで、頼むよ!」

 マネージャーは急かす。
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