花鎖に甘咬み


「仮眠は取る」

「それって、どれくらい?」

「30分とか、1時間とか?」

「……っ、それだけ?」

「必要ないだけだ。眠くなんねえし、行動に支障もない」



話を聞いていると心配になってくる。

ちゃんと寝た方がいいよ、体に悪いもん、っておせっかいおばさんみたいなことを言いたくなってしまう。


それに……眠れないってことは。
安心できてないからじゃないのかな。


聞いたことがある、眠くなるのはリラックスできているからだって。



「……くあ」



真弓が無防備にあくびを零した。

かわいい。


だけど、そのまままた目を閉じて眠りこんでしまいそうになったので、さすがに慌てて真弓の体を揺さぶる。睡眠はちゃんと取ってほしいけれど、それとこれとは別だ。



「真弓っ、とりあえず今は起きてっ」

「なんで……?」

「だって、もう朝だし、えと、それに……」

「それに?」

「お腹、すいたの!」



と、ちょうどそのタイミングで。

ぐるるるるる、と私の胃袋が悲鳴をあげる。空腹に正直なのが、私の胃袋だ。




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